利用価値の低い真竹のタケノコで自家製メンマを作ってみた

タケノコと言えば、普通まず一番に思い浮かぶのは、水煮のものが1年を通して普通に売られている”孟宗竹”。

また、せいぜいが次点で”淡竹”と言ったところでしょう。


6月頃にでる淡竹のタケノコ。アクが全くなく、特有の甘みがある。

しかし、筍というのはそもそも竹(あるいは大型ササ類)の新芽であるゆえ、当然、それら植物の種類の分だけ筍にも種類があるわけで、中にはほとんど食用に利用されることのない不人気なものもあります。

デカイ…けど苦い。そんな真竹のタケノコ


アスファルトをも突き破る、尋常でない根性。見習いたいね。

上の画像は私の家の近所に生えている”真竹”のタケノコで、これは孟宗竹のそれよりもアクや苦みが強く、これだけ大きいものが道沿いにいくらでも生えているのにも関わらず、誰も採らないような状態です。
また、上の画像のようにアスファルトをも突き破るほどの繁殖力を持つため、そのまま放っておくと道路や山の外にまで侵入しかねません。

そうなってしまうと、最終的には、もはやどこをみてもコイツらでいっぱい…なんて地獄絵図になることは必至ですので、今回はこのタケノコの新たな利用法として”自家製メンマ”を作ってみようと思います。

自家製メンマ作りは菌との戦いだった


ついでに淡竹も採ってきた。美味いから仕方ないね。

さっそく近所の山で真竹を採取してきました。
ちなみに、真竹・淡竹のタケノコは孟宗竹とは違って、わざわざ土を掘り返して引っこ抜く必要なく、地上部を軽く折り取ればそれで採取は完了するため、体力もいらず比較的ラクです。

では、いざメンマ作り…と行きたいところですが、その前に。


ある程度成長していたからか、孟宗竹よりも可食部が多い。これで美味しければ良いんだけど…

皮を剥いて

アク抜きをしないと行けませんね。

通常は米ぬかや木灰を使うのですが、家になかったので、今回はたっぷりのお湯に塩とベーキングパウダー(重曹)を混ぜてあります。で、煮立たせたまま30分ほど放置。

その後は手でも触れられるように軽く冷水で洗い流し…

小さく切りましょう。なんとなくメンマっぽいかなあ~、という形をイメージしつつザクザク切っていきます。

さあ、ここまでは驚くほどトントン拍子で進んでますが、ここからが問題なんですよ。

と、いうのも、メンマ(シナチク)というのは本来、中国南部に生息する”麻竹マチク)”という竹のタケノコを塩もみし、この植物が本来持っている乳酸菌によって発酵させて作るものであって(参考サイトー竹の子がメンマになるまで
まあ、普通のタケノコも乳酸菌自体は持っているのでそこは問題ないのですが、この麻竹のみが長年メンマの原料として使われてきたのには当然理由がある訳で、含まれている糖分やその他の成分のバランスが違うと失敗する恐れがあるのです。

乳酸菌の種類は数あれど、その多くが活発になるためには30℃ほどの気温が必要になるため、当然、発酵過程ではこの蒸し暑い時期に常温で放置しないとダメな訳で。それで失敗してしまうと、まあ…端的に言えば腐るんですよね。

今回のように、はじめからメンマを作る目的でタケノコを採るとすると、そこそこの量を用意しておくものかと思いますが、失敗すればそれが全て腐敗する。食材を無駄にしないためにも、私自身のSAN値のためにも、それは絶対に避けたい。

という訳で、ここからは色々考えた結果、”これならまあ上手くいくだろう”という結論の出た手法を用いたいと思います。

まずは塩。
これは発酵ならぬ腐敗を防ぐためには欠かせないものですので、これでもかというほどにタップリ振ります。

味は多少しょっぱくなるかもしれませんが、後で流水で洗い流せば食えるレベルにはなるでしょうし、腐るよりマシです。

で、本来はこのまま揉んで、発酵に入るのですが…

ヨーグルトも少し入れてみましょう。いわゆる”追い乳酸菌”ってやつですね(いわゆらない)。

そして最後に発酵を促進させるための糖分、ここでは普通の上白糖を加えます。もちろん黒砂糖でも別に問題ないでしょう。

後は菌が活発になるように、しっかりと手で揉み

上記サイトに従い、常温で一か月以上放置。…って一か月!?

今まで私が、20年の人生の中で培ってきた食べ物に関する常識からすると、それだけの期間常温で放置すれば、ほとんどのものが腐りそうな気がしますが…まあ、ここまで来た以上、”なんちゃってメンマ”のような結果に終わるのは忍びないので、思い切ってやってみましょう。

いやあ、楽しみなような怖いような。

そして1か月後・・・

うわあ・・・(ドン引き)

しかし開けてみると、どうひいき目に見ても腐っていそうな外見とは反し、凝縮されたぬか床のような強い発酵香が漂ってきます。どうやら成功したみたいですね。

ここからの工程は作り手によって異なるようで、ネットで調べてみると、この後、塩抜きをしてから干したり、あるいは水洗いせずに干したり、干さずにそのまま味付けをして食べる…なんてものもありましたが、せっかくメンマを作るのだから乾燥工程は入れたいところ。
ただ、外側の白い菌の塊?のような部分は、ちょっと視覚的に拒否反応が起こるので、今回は間をとって、サッと水洗いしてから干すことにしました。


なんかヌルヌルしてそう。

流水で洗い、

ザルに開けて干します。

天気予報によると1~2日は晴れが続くそうですが、何分今は梅雨なので多少面倒ですが、
雨が降りそうになったら軒下に避難 → 晴れ次第、また室外機の上に…
というような感じで、このままカラカラになるまで乾燥させましょう。

だいたい5日後ほど乾かすと、感触がパリパリになり、表面は塩を吹いて真っ白になりました。

ニオイは…何百年も前から継ぎ足して使っている秘伝のぬか床って感じですね。ちなみに、干している最中は蠅がたかっていました。
食べても大丈夫なのだろうか。

乾燥工程が終わったら、沸騰したお湯につけて一晩放置します。いわゆる塩抜きってやつですね。

水につけていると、カラカラに干からびていたタケノコが戻り、膨らんで何となくメンマらしき様相に…
ニオイも普段嗅ぎ慣れているヌカに近いものになり、イケるんじゃね? とまで思えるようになりました。

最後の工程では、ダメ押しに醤油・酒・唐辛子で作った液で煮て味をつけます。
ここでしっかり煮ておくことにより、仮に雑菌が繁殖していたとしてもある程度殺菌することが出来ます。

色が変わり、味が浸み込めば

完成!

総調理期間、なんと 1か月と1週間 の自家製メンマです。

味付けは本来のメンマとは違うのである意味独特ですが、後にくる風味は完全にメンマのそれで、少なくとも腐ってるということはなさそうです。
ただ塩抜きをしっかりしてしまったせいか、必要以上に水を吸っていて食感がグニャグニャしているのが残念なところか。それ以外は完璧であるがゆえに、もったいないですね。

今回は割と早い時期に出たタケノコを使って作りましたが、真竹なら割とデカくなっていても穂先は使えるので、メンマにすれば初夏まで作れる優秀な保存食になり得ると思います。

特に家に竹林をもっていて、毎年毎年、出てくるのを捨てている・・・という人はぜひ試してみて下さい。