理論で学ぶ”音学”講座 第7回~ノンダイアトニックコードの種類と機能~

理論で学ぶ”音学”講座、えー今回は第7回ですね。ラッキーセブン。

前回予告した通りノンダイアトニックコードについて解説していきましょうか。

ノンダイアトニックコードとは

ずばり、

ダイアトニックコード以外のコード

です!

…と、これは流石に乱暴すぎますが、説明としてはあながち間違いでもないわけで。

本講座第6回において、ダイアトニックコードとはなんぞや?というのを解説しましたが、サクッとおさらいすると、ダイアトニックコードというのはつまりそのスケール上にある音のみを使って出来るコード群を指し、例えばKey=C(ハ長調)の場合

C-Dm-Em-F-G-Am-Bdim がそれにあたります。

これはキーのセンターから度数で表記するとそれぞれ

Ⅰmaj-Ⅱm-Ⅲm-Ⅳmaj-Ⅴ-Ⅵm-Ⅶdim

となりますが、当然これはそのままどんなキーにおいても適応できます。DTMerの人は、ピアノロールでいう白い鍵盤のみを使ったスケールがちょうどCメジャーになるので、それをトランスポーズすれば簡単に理解できるでしょう。


ピアノロールにおけるCメジャースケール。白い鍵盤のみで構成されていることが分かる。

で、ここまでがダイアトニックコードの説明で、ノンダイアトニックというのはそれ以外の、まあちょっと語弊のある言い方ですが、黒い鍵盤を使ったコード(※1)正確には”その曲で使用しているスケール外の音を使ったコード”のこと。メジャースケールにおいては前述のⅠmaj-Ⅱm-Ⅲm-Ⅳmaj-Ⅴ-Ⅵm-Ⅶdim以外のコードを指す。というわけですね。

ここまででノンダイアトニックコードの定義は理解して頂けたかと思いますが、では実際に曲の中でこれらがどのような使い方をされるのか?

その全てを列挙し、かつこれがなぜ成立するのかということまで書くと、尋常でない文量になるので、ここからはメジャースケール・マイナースケールにおいての、比較的良く使われるノンダイアトニックコードについて、主にどのようにして使えば良いかということについて重きをおいて書いていきます。

代表的なノンダイアトニックコード

セカンダリードミナント

まず、ノンダイアトニックコードの中も一番、と言ってよいほどに使用頻度が高いのがこのセカンダリードミナント。
現代のポップスはもちろん、ジャズ・クラシックにおいても当然のように使われ、特にJ-popのエモいポイントにもなる重要なコードです。

これは簡単に言うと、本来ダイアトニックコード上においてはV7(key=CのG7)の1つしかなかったドミナントセブンスコード(※2)ドミナントセブンスについて詳しく知りたい方は本外部サイト参照。を、より解決感を得るためにもっと増やしてやろうぜ!というようなイメージで考えて頂ければ問題ないと思います。


いわゆる丸サ進行(Ⅰ‐Ⅶ7‐Ⅲm-Ⅱ7m‐V7)のⅦ7もセカンダリードミナント使用例のひとつ。

つまりダイアトニックであればⅡm・Ⅲm・Ⅵmとなるはずのコードを、それぞれⅡ7・Ⅲ7・Ⅵ7に置き換えて、一時的にこれをドミナントとして見立て、最終的にダイアトニックコードに4度あるいは半音で解決させて進行に変化を加えたり、転調に使ったりするわけですね。(※3)例えばkey=Cの場合、C-E7-A7-Dm7-G7-Cのような進行でよく使われる。この場合はダイアトニックであるAm7を仮のトニックとして見立てるとE7-Am7がちょうどAmキーでのV7-Ⅰmとして成り立ち、解決感が得られる。またこの場合、Em7をE7、Dm7をD7としても良い。

※4度・半音以外に進行するドミナントについて

ジャズ理論においては本来のV7とは異なり、例えば2度上昇・下降して解決するセカンダリードミナントも存在し、これは例外的にスペシャル・ファンクション・ドミナント(S.F.D)と呼ばれます。

これもジャズ以外に最近のポップスでも頻出しますが、特に、というかほとんどの場合Ⅱ7-I・♭Ⅶ7-Ⅰの進行として使われるため、この二つを覚えておけば作曲・分析で困ることはないでしょう。

#Ⅳm7(♭5)

お次は#Ⅳm7(♭5)について。
m7(♭5)(※4)♭5と書く代わりに、-5と書いても良い。余談だが、このコードはハーフディミニッシュと言う別名も持ち、理論書やサイトによって書き方が異るため初心者にとって非常に分かり辛い。音楽理論にはこのような表記ゆれが多くあり、独学者への殺意を感じる。というのは、マイナーセブンスの5thを♭(半音下げる)させたもののことで、CのダイアトニックコードにおいてはルートからB,D,F,AとなるBm7(♭5)を指しますが、それのルートが#Ⅳなので、つまりF#m7(♭5)のこと。

このコードはルート(1音目)と5th(3音目)がトライトーンと呼ばれる不安定な関係になっており、ダイアトニックのV7に進行するとそれぞれ半音で構成音に解決するので(ドミナントセブンスがトニックに解決するのと同じ感覚で)、機能的にはⅣのようなサブドミナントとして扱うことが多いです。

また、これは同時にトニックの代理コードとして使用可能なため、実質的には全てのダイアトニックコードから進むことが出来ます。
作曲においては、歌モノの2コーラス目などで進行に変化を加えるために使うと良いでしょう。

ディミニッシュコード

ディミニッシュコードはルートから数えて短3度の音を2つ以上重ねたもの。例えば前の見出しで出てきたBm7(♭5)の構成音はB,D,F,Aでしたが、これがB,D,FまでならBdim(ディミニッシュ)、Aの代わりにA♭を足せばBdim7(ディミニッシュセブンス)となります。

さて、このディミニッシュコード、一般的な音楽理論においての使用方法には3パターンあります。
が、これもまた他のノンダイアトニックコードの例にもれず細かく説明するとややこしいため、それぞれどのような場合に使用すればよいかということのみ可能な限り簡潔に書いていきます。

1)トニックの代理コードとして

既にある曲を編曲するとき、より演奏しやすくするため、あるいはジャンルを変えるため、聴いている人を飽きさせないような工夫のために本来のコード進行を変えることがあります。

これをリハーモナイズと呼ぶのですが、その際にトニック、key=CでのCのコードをそのままディミニッシュコードに置き換えることが可能で、これがトニック・ディミニッシュと言う使用例の1つです。

2)ドミナントセブンスの代理コードとして

先ほど出てきたBdim。このコードの構成音はB,D,Fであり、これは全てkey=Cにある音、つまりダイアトニックコードですが、この音の羅列を見て何かに似ていると思いませんか?

そう、これはルートの音が無いだけで、G7と同じ構成音ですよね。

そしてG7がCに進むとき、解決感があるのは3rdであるBと7thであるFの音がそれぞれ半音でトニックの構成音に収まるためであるため、BdimコードはG7(V7)の代理コードとしても使用できるのです。

3)パッシング・ディミニッシュ

さて、ここまで代理コードとしてのディミニッシュ・コードを見てきましたが、最後は少し変則的なパッシング・ディミニッシュと呼ばれる使用法です。

これはあるコードのルートから進行先のコードのルートの関係が長二度(半音二つ分)である場合に、その間に経過的に半音で進行するdim7を挿入できるというものになります。

つまり例として

パッシングディミニッシュ

このような非常に良くある進行があるとします。

このときCM7-Dm7のルートはそれぞれC(ド)-D(レ)であり、この間隔は長二度であるため

このようにリハーモナイズすることが可能になる、というわけです。

もちろんこれはⅠM7-Ⅰdim7-Ⅱm7に限らず、Ⅱm7-Ⅱdim7-Ⅲm7や、逆にⅢm7-Ⅱdim7-Ⅱm7のように下降する際にも使用可能です。

おわりに

さて、今回はノンダイアトニックコードについて解説しましたがいかがでしたでしょうか。

前回のダイアトニックコードと比べると非常に複雑であり分かり辛く、また文量の関係上、大幅に省いた点もありましたが、実践という意味では役立つことは間違いないはずです。

耳の良い人であれば「なるほど、この曲のこの部分はそのような意味があったのか」というように確認作業になることもあるでしょうが、聴いて覚えるのと理論として頭の中にストックし、意識的に使うのとでは音楽的な幅に大きな差があることでしょう。

この記事を機会に初めてコード理論というものに触れた人も、これをきっかけとして理論書などを読み、より深く学んでいただければ作曲・編曲がより捗ること間違いなしです。多分。

…まあ、少なくとも理論というものは覚えておいて損をするものでも無いですし、耳のあまり良くない人にとってある意味補助的な、目の悪い人にとっての眼鏡のようなものになるものだと個人的には思っており、今まで何となく聞き流していた曲がよりクリアに感じられるということもあることは私の経験的にも間違いないので、気が向いた時にもちょくちょく勉強して見ると楽しいと思います。

注釈

注釈
1 正確には”その曲で使用しているスケール外の音を使ったコード”のこと。メジャースケールにおいては前述のⅠmaj-Ⅱm-Ⅲm-Ⅳmaj-Ⅴ-Ⅵm-Ⅶdim以外のコードを指す。
2 ドミナントセブンスについて詳しく知りたい方は本外部サイト参照。
3 例えばkey=Cの場合、C-E7-A7-Dm7-G7-Cのような進行でよく使われる。この場合はダイアトニックであるAm7を仮のトニックとして見立てるとE7-Am7がちょうどAmキーでのV7-Ⅰmとして成り立ち、解決感が得られる。またこの場合、Em7をE7、Dm7をD7としても良い。
4 ♭5と書く代わりに、-5と書いても良い。余談だが、このコードはハーフディミニッシュと言う別名も持ち、理論書やサイトによって書き方が異るため初心者にとって非常に分かり辛い。音楽理論にはこのような表記ゆれが多くあり、独学者への殺意を感じる。