毛だらけのシダ植物”イノデ”を採って食べてみる
3月ももう下旬に差し掛かり早春の山菜はそろそろ終わりを迎える。
もう少し暖かくなればタケノコが生えるほか、ミズナやウドなど春の山菜を楽しむことができるのだが、私の住んでいる地域では今は非常に中途半端な時期でありノビルなどほぼ通年で採れるものや大きく育った三つ葉などしか見られずやきもきした気持ちで日々を過ごしていた。
しかし先日、近所の里山にいつものように散歩に行っていたところ道のわきに生えているシダ植物から毛むくじゃらの新芽が伸びているのを見つけた。
初めに見たときはクサソテツなどほかのシダ植物が十分に成長できずに中途半端なまま残ってしまったものかとも思ったが、時期的にもちょっとまだ早いし、生えているものの一本を折って見てみると内部は瑞々しく綺麗な色をしていたので違う種のものだと考え、家に持って帰って調べるとどうやらオシダ科の”イノデ”という植物だということが分かった。
ただ種類が同定できたのは良いがいくら調べてもイノデを実際に食べて見たという情報は見つからず、かといって毒があるということを書いた文献も見当たらなかった。
・・・これは食べるしかない!
食欲を全くそそられないキノコ香と剛毛
ということで早速調理していこうと思ったが、多くのシダ植物は食用のものでも強い”アク”をもっているので、とりあえず食用にしたという情報がない以上これも食べる前にアク抜きをしておこうと思う。
通常のアク抜きではまず、塩水で湯がいたあと冷水にとり重曹(木灰)をふりかけて容器に入れ一日置くのだがとにかくイノデにどれくらいアクがあるのか分からないので通常、塩水で湯がくところにも重曹を入れ出来るだけ食べやすくしておいたほうが良いだろう。
ということで早速湯を沸かし採ってきたイノデを軽く洗って投入していこうと思ったのだが、水でぬらすともともとあった毛がぬめって手でつかんだだけでもこれが食べるときに邪魔であることが容易に分かったので急遽、先にある程度取り除いておこうと思い立った。
が、しかし、毛が湯がいた鰹節のような状態になって指にくっつきまくり非常に取りづらい。
今回は味を試すために少量採ってきただけなのでそこまで面倒くさくはなかったが他の山菜と同じようにおかずの一品として使えるほどの量があると、この下処理だけでもかなり時間がかかるだろう。
さて、その後、苦戦しつつもある程度毛を抜き終わり、沸かしておいた湯に投入したのだが
ん?何だこの匂い・・・
なんか埃っぽいような・・・
きのこだコレ!
湯で始めるとすぐに採りたてのキノコ類のような独特の香りがキッチン中に広がり始め見た目も相まってすでに食欲がほとんどなくなってしまった。
しかし一度食べると決めた以上はせめて味見だけでもしておきたいのが人情というものなので何事もなかったかのようにアク抜き作業を続けていく
まず塩と
重曹(はなかったのでベーキングパウダー)を加えさらに湯がいていくと
うわぁ・・・
アクが抜けたのかお湯が若干緑がかってものすごくまずそうに見える。
どうやら本気で食欲をそぎに来ているようだがここでやめると負けた気がするので感情を殺して作業に戻る
茹で上がってやわらかくなったブツを冷水にとり
しばらく置いた後タッパーにつめて更に重曹を振りかける。
さあ、これで一晩置いたあとやっと食べられるというわけだ。
いざ、実 食
本来ならばまるまる一昼夜、つまり処理を終えたのが昨日の夕方だったので同時刻までおかなければならないのだが、今日は祝日で一日ヒマなうえに外は雨が降っていて出かけることも出来なかったので我慢できずに昼ご飯ついでに調理しておくことにした。
まずタッパーを開封する。
さて昨日のキノコ香はどうなっているだろうか・・・
パカッ
お?
なぜか海苔の佃煮みたいなにおいがする
確かにこの時冷蔵庫に海苔の佃煮が入っていたのだが位置は離れていたし、タッパーもしっかり密封していたためこの香りはイノデ本体から発しているものだと思われる。
・・・まあキノコ臭いよりは食べやすいし良いか。
続けてこれを軽く塩ゆでして
おひたしにしてみました。
(処理前までは割と量があるように見えたものの茹でてみるとかなり縮んで少なくなってしまったので食用として利用する際はかなり採ってきたほうが良いだろう。)
早速いただきま~す。
(´~`)モグモグ・・・
うん・・・
・・・まあ、まずくはないよね。
まずくはないけど後味にわずかに取り切れなかったえぐみがある、あと口の中に取り除ききれなかった毛が残って飲み込めない。
全体的な食味は普通にウワバミソウなど一般的な山菜のおひたしに近いが、シャキシャキとした触感が無いため悪い意味で無個性という感じでわざわざ面倒な処理を行ってまで食べる必要性は正直感じられない。
ちなみに筆者はこの記事を書いている時点で食べてから2~30分ほど経っているのだが全く腹痛などの異常は感じられないので毒はない・・・と思う。
まあ、どうしても食べたいという人は試してみてもいいのではないだろうか。
※もちろん自己責任でね!
食味評価:C
希少価値:D
総合評価:★★☆☆☆
ディスカッション
コメント一覧
21年山菜シーズンもそろそろ終わりますが、このシダ類(写真は”男”?)の”女”?がとんでもない数の群生に遭遇しまして(合間合間に毛の濃い”男”があり)、私もこの機会に食す事を決意しました。(美味しければ、来年からは労せず”ゼンマイ”を大量に採れるぞ!との目論見!)
勇んで帰宅し、乾燥ゼンマイと同じように2日間モミモミ乾燥させて、お湯で戻して煮物にしてみましたが、毛を取らずに乾燥しているせいか、その毛と思われる粉臭くささでお世辞にも美味しいとは言えませんでした。しかし、びっちり生えている毛を(”女は”白色の毛)を丁寧にそぎ落とせば、歯ごたえと風味は”ゼンマイ”と若干似ているので調理法によってはいけるのではないか!と感じました。もちろんお腹の調子は大丈夫でした!! 来年はその毛を削いでまた試してみたいと思います。
やはり山菜として利用しようと思うと毛がネックになりますね…
労せずに採取しようとして大量の毛を処理する手間をかけるという矛盾はありますが、そうやって手間をかけることも山菜採りの面白さのひとつかと私は思います。
頑張ってください!