自作の蒸留器でミカン香がする毒草”ミヤマシキミ”から精油を抽出したけど…

2020年3月10日

大量に生えていて、なにかしらの秀でた特徴を持つ。

というのは、植物の利用法を考えるうえで一つの目安となります。

単純に食用にするほか、民間薬として使われたり、嗜好品として使われるものもあったり。
しかし世の中なかなか”うまい”だけの話というのは無いようで、そのような種に限って何かしらの毒成分を含んでいたりもするため、そこから試行錯誤が生まれるのです。
(食べ物で例を挙げると、有名なフグやジャガイモの新芽などに加え、豆類なども生食すると中る毒成分をもちます。)

ミヤマシキミ
近所の自然公園に生えていたミヤマシキミ。”深山(みやま)”と名の付くわりにどこにでもある。

今回紹介する”ミヤマシキミ”もそんな特徴を持った植物の一種で、秋に出来る赤い実をナンテンなどと同じように正月に飾るほか、見た目が映えるため庭木などにも利用されるのですが、やはりというべきかかなり強め毒成分を持ちます。

まあ”少量ならば毒も薬になる”というので一昔前は民間薬として頭痛・めまいなどの際に使われていたようですが、ハッキリと成分の分かった現代では内服すると危険とのことで、誰も見向きもしないような状態です。
私自身もこの植物を知ってすぐは”その程度の利用価値か・・・”と一度はスルーしかけたのですが…

なんと調べてみると、本種はミカン科の仲間であるため、葉や実には柑橘系の非常に良い香りがあるというのです!

これほど秀でた特徴があるのであれば何かに利用できないものか…と考えたいたところ、『香りをかぐだけなら問題ないということは、揮発成分である香りだけを水蒸気蒸留で取り出せばいいのではないか?』という天啓があったため、今回はこれを試してみようと思います。

まずは水蒸気蒸留器を手に入れる

先にも出てきた”水蒸気蒸留法”というのは、簡単に説明するとハーブ・果実類に含まれる香り成分である精油を取り出すために精油成分の多くが揮発性であることを利用して、
”対象を蒸したときに発生する”水蒸気”を冷やしてから再び水に戻すことによって、香りの成分を濃縮した液を生成する”
という手法です。

そしてこの手法をとるためには”水蒸気蒸留器”というものが必要になる訳ですが、これが異常に高い
 

このように天下のAmaz〇n様ですら、まともな会社のまともな製品を買おうと思うと7~9万円ほどしており、一介のフリーランスライターである私には内臓でも売らなければとても出せない金額です。

しかし、ここで諦めたら話になりません。
そもそもここまで書いた記事も無駄になるし。

ではどうするのか?
それは当然、自分で作るしかないでしょう。

自家製水蒸気蒸留器を作る

※今回は”水蒸気蒸留器 自作”で検索して一番簡単そうだった
ガラス瓶式ハーブ蒸留器の作り方
というサイトを参考にさせて頂いております。

というわけで、蒸留器を作るにあたって必要な部品をAmazonで揃えていきます。
といっても、蒸し器・冷却用つけ瓶・口金はすでに家にあるため他の細かいパーツだけですが。

まずは精油を入れるための小瓶。
当然ながら漬け瓶のなかに入る大きさのものを選びます。

で、小瓶の口径よりも細いシリコンチューブと

最後に、蒸留器と口金・チューブ瓶口を固定するためのアルミテープ。

なんとこれだけ揃えてお値段驚きの1701円。
やっぱ自分で作った方が良いよね~。

あとはこれを上記サイトの通り組み上げれば・・・

水蒸気蒸留器
あふれ出るマッドサイエンティスト感

はい完成。

とはいえ、これが問題なく動作するかどうかはやってみないと分かりませんので、早速ミヤマシキミの葉を採ってきて試してみましょう。

山の中のミヤマシキミ畑

所変わって、ここはウチの近くにある里山です。
誰も採らないからか、上の画像のように登山道沿いにも大量に生えているので、そこから葉っぱを少し頂いていきましょう。

と、その前に、まずは葉の香りを確認してみましょう。これでもし無臭だったり変なニオイがあったりしたら、完全にこの記事が死にますからね。
大事なところです。

葉っぱを一枚とって…

千切ってから匂いを嗅いでみます。




ほほう。
これは何というか…無理やり一言で表すならミカン山椒胡椒を混ぜたような香りがしますね。
ミカン・山椒は同じミカン科なのでともかくとして、胡椒は全然違う植物ですが…まあ、大体そんな感じということで。

実際に嗅いでみて分かりましたが、爽やかさの中に少々のスパイシーさもあって、話に聞いていた以上に個性的かつ良い香りがします。
これは期待が持てる。
どれくらいの量が必要になるか分からないので、とりあえず袋いっぱい持って帰っておきましょうか。

いざ、精油作り!

…さてさて、いよいよ本記事のメインテーマである精油作りを開始します。

まずは採ってきた葉っぱたちを予め水を張った蒸し器にブチ込み

スイッチオン!


ビンに付けるオモリが無かったので浮いてこないよう手で押さえます。

チューブがちょっと長かったので半分ほどハサミで切りました。

ちなみに参考サイトによると

  ノウハウ1;チューブの水滴落し
シリコンチューブの内側に水滴が出来てしまう場合があります。
この様な場合、ボールペンなどで軽く5,6回、コンコンとチューブをたたくと、
水滴が落ちて、水蒸気の通りが良くなります。

ノウハウ2;蒸気漏れの黙認
蒸留中の水蒸気漏れを完全に無くす事は出来ません。多少の蒸気漏れは黙認し、
むしろ、蒸留者しか味わえない特権として、香りを楽しんで下さい。

と、ありますが、私が試した際に気になったことがあったので記載しておきます。

まず、①に関して
”ボールペンなどで軽くたたくと水滴が落ちて蒸気の通りが良くなる”とありますが、実際には口の部分で蒸気の圧力と水滴の重さがせめぎ合って中々すんなり落ちませんでした。
いったん火を止めて、蒸気が出ないようにすることで対応できましたが、結構な頻度で詰まるので、長時間稼働させる場合には改善する必要があるかも知れません。

②に関しては蒸し器の淵の部分をアルミテープで塞ぐことにより漏れを最小限に抑えることが出来ました。が、後述の通り今回の抽出効率は元サイトと比べるとかなり低いため、塞いだところであまり意味はないようです。
むしろ、ボトル内で蒸気が結露し始めるのに時間がかかったことや、チューブが溶けそうなほど熱くなっていたことから考えて、サイトの記述通り真冬に行うのが最重要かと思われます。
また、冷却部に氷を入れて見ましたが、ビンが割れることもなく普通に使うことが出来ました。

とまあ色々書きましたが結果としては・・・

これくらいの量の精油が抽出できました。

なんだ結構多いじゃんとか思ったよね?
でもホントはこの液体にはただの水も混じってるので、ちゃんと”精油”って呼べるのは上の部分に分離した1㎜程だけなんですよね

しょぼっ。

いやいや、しかしですよ。本当に大事なのは量ではなく質ですよ質。
この状態でも香りの成分はしっかりと溶け込んでいるはずなのでニオイを嗅いでみましょう。
どうせ純粋な精油がとれても、使う時には水で薄めないといけないので、香りが良いんならむしろその手間が減って得したようなもんじゃないですか。

さっそく蓋を開けて

・・・うん。

まさに腐ったミカンと言う表現がぴったり当てはまりますね。
生の時は胡椒っぽいスパイシーさのある香りだったのが完全に裏目に出て、プラス要素であったスパイシーが腐敗特有のツンとした香りに進化しちゃってます。

長々と書いてきたので、よほど酷く無ければ褒めちぎろうと思ってましたが

これはダメですね。

多少は甘いニオイもするものの、お世辞にも良い香りとは言えません。

・・・とまあ、最悪の結果に終わってしまいましたが、まあ自作の蒸留器がちゃんと稼働してくれたのが唯一の幸いです。
コイツのことはもう無かったことにして、庭に生えてるローズマリーやらを使って色々楽しんでみようと思います。

ああ、3時間もかかったのになあ。


結局もったいないからとか言って、グリセリンと混ぜてローションにしてみた。逆に肌に悪そうだ。