チャノキの冬葉で作る紅茶”ウィンターフラッシュ(仮)”は美味しいのか

2020年1月10日

番茶に比べると少し値の張る煎茶が、一番茶・二番茶と分けられているように、同じくチャノキを原料として作られる紅茶に関してもファーストフラッシュ・セカンドフラッシュと、使用する新芽の順番によってランク付けされています。
そして、この二つのうちでは当然、春のうちに発生した新芽のみを使用するファーストフラッシュのほうが高級品として扱われるのですが、これには紅茶の味の素となるカテキン類があまり含まれておらず”あっさりしすぎている”という理由で紅茶好きの中には夏以降に収穫された茶葉で作ったものを好んで飲む人も多いそうです。

で、このカテキンはどうやら一般的には茶葉の成長とともに増えていくそうで、番茶のカテキン含有量が他と比べて高いことからもそれは裏付けられています。

ということはカテキンを多く含む冬葉で紅茶を作れば、非常に味の濃い良いものが作れるのでは?と思うのですが、実際に販売されているものは秋に収穫されるオータムフラッシュと呼ばれるものが最後で、購入して試すすべはありません。

となると自分で採ってきて試すしかないでしょう!・・・という訳でやってみます(いっつもその導入だな)

思いのほかしっかりしていた茶葉たち


採りすぎた感は否めない。まあ余ったら番茶にでもすれば良いと思うよ。

はい、早速ですが、こちらが収穫してきた茶葉になります。

Twitterから来ていただいた方は気づいたと思いますが、例のごとく近所の山に自生していたものです。
まあ、家に茶畑なんかあるわけないよね。


こんな感じで山道沿いにいっぱい生えている。近くに茶畑があるという条件を満たした山ならどこでもあるんじゃないかな。

ここからいよいよ紅茶作りに入っていきますが、ざっくり説明すると主な過程は

萎凋(しおれさせる)→揉捻(もむ)→発酵→火入れ(発酵止め)→仕上げ乾燥

となるので、まずは一番初めの萎凋からやっていきます。

萎凋


竹ざるがある人はその上にのせて乾燥させましょう。

採ってきた葉っぱを枝から外し(地味にめんどい)、風通しの良い軒下に放置します。
普通は1日くらい置いておくそうですが、丸一日経っても全く変化がなかったので今回は2日置きました。
もしかすると”葉っぱがしっかりしていて萎れにくい”というのも冬葉が使われない理由の一つなのかもしれませんね。

で、これが2日置いたもの。

変わってねえ。

この工程は前述の萎れさせるという意味のほか、茶葉の持つ酸化酵素を働かせることによる、言うなれば”一次発酵”的な意味も含んでいるのですが(この時点で発酵止めをすると烏龍茶ができます)、冬場の低気温では上手く酵素が働かなかったと見え香りの変化もありません。
しかし、そもそも現在の紅茶の生産ラインでは機械を使って温度調整ができるので、これは冬に紅茶を作らない理由にはならないでしょうから、完成品がどのようなものになるのかはまだまだ分かりません。

揉捻


ザルにあけ、新聞紙の上で揉みます。大きめの竹ざるがあるならそちらを使用しましょう。

上の画像は揉捻(揉む)工程を写したものです。
こちらも多分新芽でやれば柔らかくやりやすいのだと思いますが、何度も言うように古葉は非常にしっかりとしているため、まるで形状記憶チラシを揉んでいるがごとく一向に手ごたえが感じられません。
そのため、ほどほどに水分が出たかな?と思ったところで切りあげ、次の発酵工程に移ることにしました。

発酵

発酵の工程は上でも少し触れた茶葉がもつ酸化酵素を利用して、カテキン類を紅茶の成分に変えるという目的で行います。
つまりはこの工程がないと普通のお茶になってしまうわけであり、ゆえに最も重要な工程であるとも言えるでしょう。

伊藤園が運営するお茶百科紅茶の製造過程ページによると、紅茶の発酵は室温25~26度かつ湿度90%程度の場所で2~3時間放置することで完了するそうです。
当然、一般家庭にはそのような都合のよい状態を再現できる環境はなく、私自身も一般家庭に生まれごく平凡な生活を送っているので、ここは電子レンジの発酵機能を利用しようと思います。

電子レンジに茶葉と、湿度を保つために水を溜めたカップを入れ

低気温下での酵素の失活具合を考慮し、30℃で90分×2回分置いておきます。
さあ、どうなるでしょうか。

火入れ(発酵止め)

こちらが発酵が終わった後の茶葉になります。
電子レンジで温めたあと、あまり変化が見られなかったため結局、常温下にて約1日半ほど放置しました。
けして忘れていた訳ではありません。

見た目は多少赤色が強くなり、紅茶っぽくなりましたが香りはどちらかというと緑茶っぽく、悪くはないですがこれが紅茶としてどうかと言われると何とも言えません。
しかし、さすがにこれ以上発酵させてしまうと唯でさえ強い渋みがより強くなってしまうため、ここでいったん発酵止めを行います。

発酵止めは茶葉に含まれる酸化酵素を失活させるために100℃以上で数分間過熱するのですが、今回はオーブンを使ってこれを行います。

あらかじめ120℃に予熱したオーブンに、薄く敷いた茶葉を入れ・・・

10分ほど加熱します。
この時にあまりにも長い時間やってしまうと葉が焦げるので、茶葉の量が少ない場合には7分くらいにするなどの工夫をしたほうがよいでしょう。

 

加熱を終えると、もともとあった香りが更に強まり、萎びるので、あとはこれを風通しのよい日陰で完全に乾燥させると完成です(食品乾燥機などがあればそれを使っても構いません)
カラカラになるまで根気よく待ちましょう。

仕上げ

で、1週間ほど乾燥させたのがコレです。
見た目はそれほど変わっていませんが、香りは紅茶ともお茶ともなんともいえない良いものになりました。


手で握ると粉々になる。

本来ならこの時点で終わろうと思っていたのですが、いろいろと調べてみると、このあとに更に少しだけ火を入れることによって茶葉の青臭さ完全に除去し香りを引き立てることができるそうなので、試してみようと思います。
また、若干、水分が残っている部分もあるので、このついでに完全に乾燥させてしまいましょう。


揉む、というか細かく砕きながら弱火で加熱する。

おお、火を入れるにつれて香りが強まってきました。

これは良いんじゃないか?

完成!

まだ形の残っている葉もありますが、途中で香りに変化があり、これ以上やると何か別のものを錬成してしまいそうだったので火を止めました。

あとはこれを淹れるだけです。

急須を使おうと思っていましたが、せっかくなのでティーパックで。
雰囲気大事。


色が薄いが大丈夫か?

香りはやはり非常に良いですね。
ただ、あまり紅茶感がないのが気になりますが。

さて、気になる味はといいますと・・・正直、これは紅茶とは呼べないですね。

いや、まずいわけではないんです。決してまずくはないんですが、うーん・・・緑茶? でもないな。
まあ、無理に例えるならば、煎茶8に対して番茶1、紅茶1 くらいの何とも微妙な味の飲料になってしまいました。

懸念された渋みもほとんどなく、香りも良いのですが、味のインパクトというか・・・例えばコーヒーには”苦くて酸味もある、でも嫌味のあるものじゃない。これがコーヒーだぞ!”という主張、決めてがあるのに対して、今回作ったものにはそれがないんですね。
お茶といえばお茶ですが何茶かも分からない、もちろん紅茶でもない。そんな感じです。

とはいえ、私自身、紅茶を作るのは初めてなので、正直なところ原因が原料にあるのか、それとも製法にあるのかがハッキリしません。
まあ、春になったら新芽でリベンジしてみて、改めて来年にでも確かめてみますか。