緑茶の代わりに自家製クマザサ茶はいかがでしょうか?

2020年1月15日

近所にチャノキが自生していることがわかり最近はもっぱら番茶作りにハマっている筆者ですが、タンニンたっぷりの冬葉番茶を恒常的に飲み続けることへの若干の不安と、本来ならば収穫期ではないこの真冬に葉を採り続けることで木本にどの程度のダメージを与えることになるのかという不審から、ここ数日は不振気味になっております。

そんな中、先日チャノキが生えていた山に、なにか代用品となるものが都合よく生えていないだろうか・・・という甘い考えのもと登ってみたところ、このようなものが見つかりました。

クマザサ

これは”クマザサ”というイネ科ササ属の多年生植物の一種で、『”隈”ザサ』の名の通り、地上部が越冬する際に葉の淵のみが枯れて隈取のような状態になることが特徴です。
健康食品業界などではもっぱら熊笹茶という表記で販売されていることもあったり、ものによってはご丁寧にパッケージに熊の絵を描いたりしていることも多いようですが(パンダが笹食ってるイメージか?)実際には全く関係が無い上に、コストを下げるためかチシマザサメダケスズタケなど一般的に篠竹と呼ばれている大型笹類の葉が使われていることもあって、そもそも別のものじゃん! と突っ込みたくもなります。
まあクマザサ自体に変種が大量にあるせいでほとんど見分けがつかない上に、原種が京都にしか存在しない、というややこしさを考えると、わざわざ成分的にはあまり変わりのないものを馬鹿正直に使ってられないというのも分からないではないですが。

とまあ、本筋からちょっと脱線しましたが、要するにこのクマザサは加工すればお茶にして飲むことが出来るらしい、ということが言いたかったのです。
健康にいいかどうかは現時点でハッキリとしたデータが出ていないので何とも言えませんが、私が以前に別の場所でたまたま飲む機会があったときには割と美味しかったような記憶があるので、この機会に軽く試してみようと思います。笹類、というかイネ科の植物は放っておくとアホほど増えるので、美味しく飲めるのなら種の存続とかあまり気にせずにバンバン作れて、お得ですし。

ササ、採り放題です。

早速、本記事の主役であるクマザサを採取しに行くわけですが、先ほどまでで大方どのような場所に生えているのかの当たりはついているので、あとは群生しているスポットを探すだけです。
というかそもそも笹自体、竹と同じように地下茎で増殖していくものなので開けた場所ならばいくらでも増えるんじゃないかと想像はしていたのですが


奥の方までずっとクマザサです。

枯れたシダ類に混じって、たくましく繁殖している。

それにしてもここまで増えるとはな。

写真の場所は以前クマザサを見つけた山の一部で、とても近所の里山とは思えないほどに見晴らしが良く、私の最近のお気に入りのスポットになっているのですが、よくよく下を見てみると一面にビッシリとクマザサが生えておりました。
地面カチカチの粘土質なんですけど・・・

つーか、笹って日当たりの悪いジメジメした場所に生えているイメージがあったんですが、ここは一日中直射日光が当たる場所でほかの草本といえばシダしか生えていないんですよね。
やっぱイネ科つよい(小学生並みの感想)

まあまあ、それは置いといて、本来の目的である採取に移ります。

葉を採るときにはチャノキと同じように鋏で、これだけ多ければこんな気遣いは無用かもしれませんが、一応、一株に葉を数枚残すように上のほうだけを切り取ります。
他に誰も見てない所でこういう気遣いが出来るかどうかで人間の価値は決まると思いますねえ!(溢れ出る真面目さ)

で、あとは同じようにして、出来るだけ綺麗な株から少しづつ葉を頂いて・・・

40リットルのごみ袋に半分くらいの量を採取することが出来ました。

ま、取り合えず今日はこんなもんで良いでしょう。

謎の甘味。

そんな訳で、採ってきたクマザサがこちらになります。

ここから加工に入るのですが、他の方のブログなどでクマザサ茶の作り方を調べると、”葉を三等分くらいに小さく切って、そのままフライパンなどで乾燥させてから煮出して飲む。”というのが一般的なようです。
しかし、煎茶などチャノキを原料とする普通のお茶では、”蒸して揉んでから乾燥させることで葉の組織を壊し、よりコクや甘味の強いものにする”という製法がありますので、今回はそれを踏襲したいと思います。
なんとなく揉んだ方が美味しくなりそうな気もするし。

まずは葉を稈(イネ科草本の茎のこと)から切り離して、すでに蒸気の上がっている蒸し器で蒸します。
葉自体がかなり硬いので、時々ひっくり返しながら5分くらいは置いておいたほうが後々揉みやすくなるでしょう。

そしてここで早速、変化が訪れました。
蒸し始めてすぐは青臭い香りだったのですが、2分ほど経った頃から非常に強い甘味を伴った良い香りがします。
番茶を作った時にもある一定の時間を超えるとお茶の香りに変化するというポイントがありましたが、これはどうやらクマザサにも当てはまるようです。

ある程度やわらかくなるまで蒸せたら、ザルに開け、これでもかというくらい力を込めて手で揉みましょう。
葉のふちで指を切らないように気をつけてください。


10分ほど揉むとシナシナになる。

ここまで出来たら後はフライパンで乾燥させるだけです。
指で触ると粉々になるレベルまで弱火で加熱します。

ちなみにこの時は火を入れつつも手で揉み、葉の水分を表面に出しながら乾燥させるようにしましょう。
無駄に熱を加える必要もなくなり、かつ時短にもなります。

これぐらい細かくなったら、最後に火を少し強めて香りを立たせれば完成です。

さっそく急須で淹れて飲んでみましょう。

クマザサ茶 熊笹茶
意外なほど色が濃い。そして若干のとろみがある。

まず、湯気を嗅いでみると、一発目にガツンと甘味が来ます。
ほかに何か完全に一致するようなものは見当たりませんが、例えるならトウモロコシなどの穀物系に採りたてタケノコの香りを足したような感じか?

そして気になる味は・・・

甘い!ってかめっっっっちゃ美味しい!
正直言って飲んでみるまでは、「その辺に生えてる笹で大したもんは出来んだろ、そもそも健康食品ってマズいのが多いし」とか考えていたのですが、これは予想をプラスの方向に大きく上回ってくれました。

蒸している最中にも感じた甘い香りがしっかり味にも出ており、それが一般的に良く言う”お茶の甘味”のような回りくどいものではなく、むしろ糖類のような直接的なものを感じつつも、強すぎず、丁度良い。
しかも緑茶などとは異なり、カテキンやカフェインが入っていないためか苦みも全くと言っていいほどありませんので、これなら子どもや苦いのが苦手な方でもガブガブ飲めると思いますね。

標準和名がクマザサである原種は、一部地域にしか生えていないらしいですが、比較的原種に近い変種は日本海側に多数生息するらしいので、割とどこでも採れるというのもポイント高いです。
本当に素晴らしい。完璧ですね。

これが体に良いんだとしたら一生飲み続けたい。そんなクマザサ茶の記事でした。