はじめての昆虫食①:セミを食う。

2019年7月30日

虫を食べるというと抵抗のある人もいると思いますが、昆虫の栄養価は牛・豚などと比べても非常に高く、今後訪れるであろう食糧難を救う存在として注目されています。

とは言え、その見た目から多くの人は触ることにも抵抗があるであろう昆虫を、いざ”食べなければならない”という機会が来たときに割り切って美味しく味わうことが出来るのかと問われると少なくとも私は不可能だと思うんですよね。

そのため、今回の記事からは”はじめての昆虫食”と題し、様々な昆虫を味わい、可能な限り美味しく食べる方法を模索していきます(まあ単に興味本位の部分もありますが)。

昆虫食入門にはセミが一番

leegenhyung / Pixabay

7月も終盤に差し掛かり、家にいても窓を開けると蝉の声が聞こえてくる時期になりました。

蝉と言えば子どもの頃こそ夏になる度に採取され、羽化の様子を観察したり、虫かごで飼ったり。自由研究の素材としても人気の存在ですが、大人になると一転。
夏の疲れた体に響くやかましい鳴き声と、死体が落ちていると思わせて近づくと急に動き驚かされる(通称セミファイナル)鬱陶しい存在として認識される残念なやつです。

しかし、この蝉。昆虫食を生業とする方々の中ではどこでも簡単に採れるうえに比較的味も良く、そのうえ生まれてから死ぬまで口に入れるものと言えば樹液のみである事から普段私たちが食べているエビ・カニ等が肉食性で何を食っているのか分からない(よく見ると見た目も虫並みにキモイ)ことを考えると非常にクリーンな食材であるため昆虫食入門としては適した食材だと言えるのです。

という訳で、今回はセミの中でも特に口当たりがよいと言われる幼虫を調理し、実際に食べていきます。


来た!・・・と思ったら抜け殻でした。

蝉の幼虫は夕方ごろに土から出てくるため本来であれば完全に日が落ちる前。今の時期なら18時半頃に桜やケヤキの木を探せば幼虫を見つけることが出来るそうですが、この日は少し用があって19時過ぎ頃の出発になりました。

幼虫の潜った跡を探し、水を流し入れれば時間帯にかかわらずいつでも採取できますが、この方法だと手間もかかり採れる数も少なくなるので夜に行くのがベストです。


夏の夜は蛇や虫など危険がいっぱいです(画像はアオダイショウの子どもかな?)。最低でも長袖・長ズボンを履いて、虫除けスプレーを持ち歩くようにしましょう。

で、まずはいつもお世話になっている山の麓の川沿いを探していたのですが、探せど探せど全く見つからず・・・

本やネットで調べた限りでは時期さえ合えばいくらでも採れるような印象だったので、やはり時間帯がまずかったのか?

 

そして、いくつか近所の桜並木を巡りつつ約1時間後にやっと見つけました

羽化しちゃってるじゃん。

まあ、羽化直後のソフトシェル蝉もそれはそれで美味しいらしいので結果オーライ・・・か?

さて、いざ採るとなると流石に私も人間なので「ちょっと可愛そうだな」という感情が湧き上がってきます(ゴキブリやクモなどの不快害虫なら躊躇なく殺虫剤で一撃なんですが不思議なものですね)。


あのカメムシの仲間とは思えない美しさ。

しかし今回は初めから食べると決めて来た以上、ここで引き下がることは出来ませんので、回収して水を張ったペットボトルに投入します(こうすることで蝉を傷つけることなく絞めることが出来ます)。

その後も近辺を少し探しましたが、結果上のものを合わせて2匹しか採れませんでした。

もし次の機会があれば、もう少し早い時間に探そうと思います。


左がごま油炒め。右が素揚げ。

採ってきた蝉は水没させていても息がある場合があるため、出来るだけ苦しませず手早く調理します。

 

いよいよ実食ですが、やはり初めての昆虫食ですので、いざ食べるとなると少し抵抗があります・・・が、しかし”命を奪った以上、先入観を捨てて出来るだけ美味しく食べる”というのが食材に対する礼儀であり、先人たちの教えです。

思い切って炒めた方から

いただきます。

モショモショ・・・モショモショ・・・

モショモショ・・・モショモショ・・・

うん?

色々なサイトや本を見た中でアブラゼミの幼虫は”ナッツっぽい味がする”との意見が多かったのですが、実際に食べて見て私が第一印象で感じるのは沢蟹っぽい風味ですね。

ナッツというかアーモンドっぽい風味も確かにあるのですが、口に入れて咀嚼してから2拍ほど遅れてくるような印象です(調理法も関係あるんでしょうが)。

あとご想像の通り食感はあまりよくないですが、噛んでいると何か肉?っぽい旨味がじわじわ出てきて、まあ美味しいと言えるのではないでしょうか。

また、素揚げの方は少し油を吸ってしまって分かりづらいですが、これも沢蟹に近い味で抵抗なく食べられます。

てんぷら粉や唐揚げ粉を付けてサクッと揚げればかなり優秀なおつまみになること受けあいですね。

おわりに

正直私はどちらかというと虫が苦手な方で、去年までは蝉を触ることも出来なかったのですが、実際に食材として蝉を食べることで少し見る目が変わりました。

今後も文字通り味をしめてちょくちょくこのような記事を書くつもりですし、それらの記事をみて試して見ようと思う人も・・・多分いると思いますが、昆虫食に限らず自然のものをいただく際にはマナーをきちんと守ることは非常に重要な事です。

いまだに山に登ればゴミが捨てられていたり、タラの木などが折られているのを時々見ますが、このような行為は人として。一生物として最低の行いであり生態系の未来をつぶす事にもつながりかねません。

私自身まだまだ経験不足で、人に説教をするような立場にはありませんが、末永くアウトドア・フィールドワークを楽しめるように最低限のマナーは守りましょう。